訪問看護における「サービス提供体制強化加算」とは?

5月に入りました。皆様いかがお過ごしでしょうか?

私たちも、6月から始まる介護・診療報酬改定に向け、準備が大詰めになっております。

不安要素はありますが、頑張って対応したいと思います。

GWも終わり、体調を崩されている方もいらっしゃるようです。

ここのところ、暑い日があったかと思えば雨が降る日もあり、自立神経の乱れを来たす方もいらっしゃると聞きます。

しっかり栄養を摂り、適度な運動と休息を心がけるようにしたいものです。

本日のテーマ

訪問看護サービスには様々な加算が存在します。

その中の一つに、利用者の状態に応じたサービス提供や事業所の体制に対する加算として「サービス提供体制強化加算」があります。

本コラムでは、数ある加算の中で介護保険の「サービス提供体制強化加算」にしぼってご紹介したいと思います。

ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。

サービス提供体制強化加算とはそもそもどのようなものか?

サービス提供体制強化加算が創設された主旨は、「職員の早期離脱を防止して定着を促進する」ことにあります。

詳細は後ほど解説しますが、勤続年数が一定以上の職員を一定割合配置するなどの要件を満たした事業所が算定できるものです。訪問看護の場合は1回の訪問に対して所定の単位数が加算されます。

2021年度の介護報酬改定では、サービスの質の向上や職員のキャリアアップを一層推進する観点から区分の創設や算定要件、単位数の変更が行われた経緯があります。

医療保険にはこのような加算はなく、介護保険のみ算定が可能となります。

余談ですが、サービス提供体制強化加算が算定できるサービスは、訪問看護だけに留まりません。

サービス提供体制強化加算は、訪問看護だけではなく多くのサービスに存在する加算となります。

サービス提供体制強化加算が算定できるサービス

・(介護予防)訪問入浴介護

・(介護予防)訪問看護

・(介護予防)訪問リハビリテーション

・通所介護、地域密着型通所介護(療養通所介護含む)

・(介護予防)通所リハビリテーション

・(介護予防)短期入所生活介護

・(介護予防)短期入所療養介護

・(介護予防)特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護

・介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

・介護老人保健施設

・介護療養型医療施設

・介護医療院

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

・夜間対応型訪問介護

・(介護予防)認知症対応型通所介護

・(介護予防)小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護

・(介護予防)認知症対応型共同生活介護

当該加算が設定されているサービスは、これだけたくさんあるのです。

配置される従業者の定着度や、より上位の資格を保有する従業者が占める割合を高めるための取り組みに対し、国は加算によって評価しているということです。

サービス提供体制強化加算の取得率

上記は厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」から引用した資料になりますが、サービス提供体制強化加算の算定率が示されています。

こちらを見ますと、加算(Ⅰ)は24.80%、加算(Ⅱ)は10.58%となっております。

筆者の感想ですが、加算取得率は少ないように思います。

詳細については後述いたしますが、加算算定のハードルが比較的高いのが理由かと思われます。

サービス提供体制強化加算の単位数と算定要件とは?

サービス提供体制強化加算の単位数

介護予防(要支援者)の場合、(Ⅰ)が6単位/回、(Ⅱ)が3単位/回

となっております。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問を行った場合、1回(20分)につき6単位を算定することになります。

例:要介護者に理学療法士が40分の訪問看護を行った場合

(294単位※+6単位)×2回=600単位

※2024年介護報酬改定による基本単位による。

また、加算の算定要件については下記の通りです。

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)

・すべての看護師等ごとに研修計画を作成し、計画に従い、研修(外部の研修を含む)を実施していること

・利用者に関する情報の伝達、サービス提供の留意事項の伝達、看護師等の技術指導を目的とした会議をおおむね1ヵ月に1回以上開催し、開催状況の概要を記録していること

・全ての看護師等に対し、事業主が費用を負担して、健康診断等を定期的に実施していること。

・看護師等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること

サービス提供体制強化加算(Ⅱ)

・すべての看護師等に対して、個別の研修計画を作成し、計画に沿った研修を実施していること

・利用者に関する情報の伝達、サービス提供の留意事項の伝達、看護師等の技術指導を目的とした会議をおおむね1ヵ月に1回以上開催し、開催状況の概要を記録していること

・すべての看護師等に対して、事業主が費用を負担して、少なくても1年に1回以上健康診断等を実施していること

・看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者の占める割合が30%以上であること

両者の算定要件を比較すると、看護師等の勤続年数の多寡によって単位数が異なっていることがわかります。

サービス提供体制強化加算の算定に必要な手続き

加算を算定する月の前月15日までに、事業所を管轄する都道府県等に提出します。

ただし、上記は一般的なルールであり、地域によって異なる場合があります。

また、提出する書類についても「体制届出書」「体制状況一覧表」のほかにも、書類の提出を求められる場合もあります。

ですので、必ず管轄行政庁のホームページなどでご確認ください。

以下は宮崎県HPに掲載されている届出書を抜粋したものです。

様式は地域によって若干異なりますが、サービス提供体制強化加算の算定要件を満たしているかどうかについて、事業者は定期的に点検しなければなりません。

地域によって様式は異なりますが、点検する内容は上記の通りです。

したがって、既に加算を算定している事業所が次年度も以降も引き続き加算算定するに当たり、前年度の実績等を確認する必要があるということになります。

点検した結果、加算要件を満たさなくなる場合や報酬区分が変更となる場合は、都道府県等が定める期間までに必要書類を提出しなければなりません。

なお、変更がない場合については届出不要ですが、算出する際に作成した書類については保管義務があり、基本的には「5年保存」です。

書類の保存が確認できない場合、運営指導(旧・実地指導)において指摘を受け、最悪の場合報酬変換指導を受ける可能性もありますので、十分留意する必要があります。

また、加算算定後に誤りがあったことが分かった場合は、過誤調整を行うこととなります。基本的には「2年間遡及」というケースが多いようですが、一概には言えません。

単位数は高くないとはいえ、仮に2年分を報酬返還を求められた場合には相応の返還金額となりますので、大きな痛手となりかねません。

さらに、サービス提供体制強化加算の算定を検討する上でネックとなるのは、看護師等の勤続年数の関係で、すぐに加算算定ができないという点です。

当該加算を算定するにあたっては、開設後4ヵ月以降に加算の届出が可能となります。

しかしながら、法人自体を新たに設立して事業所を開設した場合は、勤続年数3年以上の要件を満たせないうちは算定できないことになります。

近年、訪問看護ステーションの必要性が叫ばれていることもあり、新規開設の事業所が非常に増えております。

前述の通り、サービス提供体制強化加算の取得率は3割程度と少ないのが実情ですが、もともとの算定要件が厳しいだけでなく、新規開設事業所数が増えていて、算定要件をそもそも満たせない状況であることも一因なのかもしれません。

ちなみに勤続年数の考え方として、同一法人の経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設等に勤務した年数を含めることが可能です。

訪問看護ステーションとしては新規開設であっても、過去に同一法人の他事業所に勤務した者(例:通所介護や特養の看護職員など)が異動し、その者が一定の勤続年数を満たしていればカウントできますし、その結果要件を満たしていれば新規開設した事業所でも4ヵ月以降に加算の届出は可能となります。

サービス提供体制強化加算の要件については、勤続年数要件以外にも「研修や会議の定期的開催」「健康診断の実施」があります。

介護事業所には、定期的な研修の機会を従業者に与え、実施し、サービスの質を高めるための努力が求められます。

サービス提供体制強化加算の算定上求められる「研修・会議の実施」は「概ね1か月ごと」といわれていますが、これは加算算定のいかんにかかわらず、当然に実施するべきものといってよいでしょう。

また健康診断においても、従業者の健康管理をするのは企業に求められる「当然の責務」です。他のサービスと同様、訪問看護サービスは利用者宅へ訪問して必要なサービスを提供します。従業者に健康不安があるようでは、よいサーヒスの実現など望めないでしょう。

ですので、サービス提供体制強化加算を算定するポイントは、事実上「勤続年数が一定以上の看護師等」をどうするか、これにかかっているといっても過言ではありません。

まとめ

今回は「サービス提供体制強化加算」の内容や算定要件、算定上の留意点について解説しました。

当該加算はまだまだ全国的に取得率は高くないのが実情ですが、介護報酬改定がスタートするこの時期に、ステーションレベルで算定可能な加算があるかどうかを精査することは有益かと思います。

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。