訪問看護師・セラピストにも必要!「言語化する力」

2024年度がついにはじまりました。

皆様にとって、2023年度はどのような1年だったでしょうか?

今シーズンは暖冬といわれ、温かい日もある中で寒い日も多く、桜の開花は例年よりも遅れたようです。

東京の開花宣言は3月29日でした。例年より5日遅く、昨年よりも14日も遅い桜の開花です。

しかし開花が遅れた分、桜を長く愛でることができそうですね。

このコラムが公開される頃は、入学式シーズン到来でしょうか。街を歩くと、新社会人の姿も目にします。

4月は新たな出発の時期でもあります。特に介護業界では報酬改定がスタートし、大混乱の様相を呈しております。

私たち訪問看護サービスは6月改定なので、そこまでの実感はないものの、6月からは医療保険のオンライン請求・資格確認の導入が目前まで迫っております。

しっかり準備し、皆様にご心配をおかけしないように対応してまいります。

2024年度もどうぞよろしくお願いいたします。

本日のテーマ

人間同士のかかわりの中で、数えきれないほど「コミュニケーション」を行います。私たち訪問看護師やセラピストなどのスタッフも、日々社内外でコミュニケーションを行っております。コミュニケーションという言葉を聞いたことがない、という方は恐らくいないでしょう。

しかし、良好なコミュニケーションを「完璧に」行える方も、恐らくそれほど多くない、というよりほとんどいないのではないでしょうか。

自分の考えや言葉が相手に伝わらない、というご経験はありませんか?筆者にはあります。

なぜ、自分が発した言葉が伝わらないのでしょうか。

物事を発信する力、すなわち「言語化する力」が関係するのかもしれません。

どの業界でもあたり前に必要ですが。介護や医療の世界でも「コミュニケーション」が大変重要です。

今回は新年度1回目として、介護業界においても大変重要な「言語化する力の重要性」をテーマに掲げ、考察していきたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください!

「言語化する」とはどういうことか

「言語化する」とはどういうことなのでしょうか。

デジタル辞書サイト「weblio国語辞書」によると、言語化の意味を「言葉で表現すること。直感的なものを説明・伝達可能にすること」と記載されています。

これだけを見ますと、単に「言葉を発する」という意味に捉えてしまいますね。

ただ「直感的なもの」を「説明・伝達する」という解説には、考察の余地が十分にありそうです。

ここで、私たちが介護現場など仕事において扱われる「言語化」というものを深掘りしていきましょう。

私たちは日々いろいろな方とコミュニケーションを取っています。

特に意識せずとも、関係者に様々なことを伝えています。これは社内外関係ありません。

コミュニケーションの相手方にも、様々な属性があるでしょう。

会社であれば上司や同僚が考えられるでしょうし、外部であれば医師や看護師、ケアマネ、相談員などが挙げられます。また、ご利用者様やご家族、もっと広げれば地域の方やお取引業者も考えられるでしょう。

関係する皆様は、生まれ育った環境も違えば、性格・境遇・ものの考え方なども全く違います。違って当たり前ですね。

ここで何を申し上げたいのかといえば、コミュニケーションの相手方はそれぞれ全く異なるわけですから、自分が「こういえばわかるだろう」ということが必ずしも奏功するとは限らない、ということなのです。

仕事の中で、このようなことを経験されたことはないでしょうか。

「自分は伝えたはずなのに、伝わっていないなぁ」と。

このよう本当によくある(誰しもが経験しているはずの)ケースでは、上手に言語化することの重要性を教えてくれます。

「言語化」能力を養うメリット

ビジネスシーンにおいて必要とされる言語化能力とは、概ね以下のように集約できるのではないでしょうか。

ビジネスシーンにおいて必要とされる言語化能力

・抽象的なことを頭で咀嚼(理解)し、言葉に変換する力

・変換した言葉を、相手にわかりやすく伝える力

といったところでしょうか。

この力があれば、仕事をする上でもかなり優位にはたらきそうですし、その人が属するチームはよいパフォーマンスが発揮できそうです。

では、言語化能力を培うことによるメリットには、どのようなものがあるでしょうか。

思考の整理が早くなり、伝えたいことが相手にしっかり届く

言語化力を鍛えることで、数多い情報を効率よく整理することができます。同時に、思考整理の方法の反復により、その処理スピードは早くなるでしょう。

このスピードが上がれば、重要局面であっても建設的かつ効果的な発言ができるようになるでしょう。

自己客観する力・内省する力につながる

言語化は、数多く存在する情報の分類・整理からスタートします。

そのため、自己を開示する場面では、自分に関する情報の分類・整理が欠かせません。

そこで「言語化」が役に立つと思われます。言語化力を鍛えることにより、自分を客観的に見つめることができるのがメリットです。

仕事でミスをすることもあれば、人間関係で上手くいかないこともあるでしょう。

そうなったときに「なぜミスをしたのか」「なぜ人間関係をうまく作れなかったのか」を振り返るのに、言語化する力が役に立ちます。

人間の英知の獲得には、自分の中で物事を振り返って反省することが必要です。

言語化によって内省が習慣化すれば、日々の生活において繰り広げられる問題を解決できる可能性が高まります。

他者へインパクトを与えることができる

うまく言語化する力を身につけば、自分が発した言葉によって相手に何らかの行動や変化を促すことが可能になります。

SNSのインフルエンサー等が一例になるでしょう。インフルエンサーが発した言葉は多くの人の関心を呼び、例えばモノが売れるとかサービスが認知されるといった効果につながります。

こちらのコラムも、この考え方を参考にして執筆しているつもりです。

皆様が知りたいであろうテーマを設定し、それに関する情報を整理してお伝えするという作業は、まさに「言語化」といってもよいかもしれません。

これからも、皆様にとって読みやすいコラムを書かせていただくことを心掛けてまいります。

言語化能力を高めるために必要なこと

ここでは実際に言語化力のトレーニングをするに際し、必要な要素とは何かについて考察したいと思います。

準備(整理)する力

「準備する力」とは、言葉で伝える内容や意見を準備する力です。

言語化する上での最初のステップは、相手に伝えたい内容を整理することです。

セミナーやプレゼンの際に、資料を作成すると思います。

その際、話す内容や資料に盛り込む項目等を事前に準備し、資料の構成を考えるときに、この準備力が役に立ちます。

言語化は、自分の意見や相手に伝えたい内容を簡潔にまとめることが重要です。そのため、事前の準備は不可欠と言ってよいでしょう。

思いつくままに発した言葉が、相手の心に刺さることもあるでしょうが、やはりしっかり言葉を組み立てて話すほうが言語化能力は向上すると思います。

決断する力

決断する力とは、言語化する中で自分が伝える内容を絞りこむ力です。

様々な選択肢の中から、「これは伝えよう」「これはやめておこう」という判断をする力といってもよいでしょう。

決断力が弱いと、意見を求められるシーンで端的に言いたいことを伝えられなかったり、即座に自身の立場や考えを表現したりするのが難しくなります。

頭の中で伝えたいことを整理することは重要ですが、この「決断する力」があると、特に会議など効率的なコミュニケーションが求められる際には威力を発揮します。

語彙力

語彙力とは、意見や情報を伝えるために、記憶の中から最適な語彙を選択し、使う力です。

語彙力とは「表現力」とも言い換えられるかもしれませんね。

一般に語彙力とは「言葉を知っている」ことを意味しますが、言語化においてはたんに単語や言葉を知っているだけではなく、それを使いこなせる力を指します。

子どものうちは、この力はあまり持ち合わせていません。しかし年齢や経験を重ねていくことで、この語彙力は身についていくといわれています。

この語彙力は、いくつになっても本人がその気になれば身に着けることができるものです。

言語化能力を養う際の留意点

言語化の要素は、大きく分けて「準備力」「決断力」「語彙力」の3つに分類されると申し上げました。

言語化を実際に高めていくには、具体的にどのようなことに留意すればよいでしょうか。

伝えたいことをできるだけ簡潔にまとめる

伝える目的に合った情報を抜き出し、分類し、言語を使って「簡潔に」伝えられている状態、これが「言語化が成功した状態」といえます。

実際の現場でも、このようなことはありませんか?「あれも伝えたい」「これも伝えないと気持ちを理解してもらえない」と思うあまり、結局何を言いたいのかがわからなくなることが・・

これは共感や理解を求めて、情報を漏らさず伝えようとするあまりに起こることです。

しかしそれが先行し過ぎてしまうと、相手は情報を十分理解しきれないために、「結局何が言いたかったの?」ということになりかねません。

伝えたいことを簡潔にまとめ、発信することが重要ですね。

発信後、相手からの反応があれば、それに対してまた発信する…この繰り返しが「良好なコミュニケーション」を醸成擦するといってよいかもしれません。

相手に伝わる言葉を使う

前の項にも関連しますが、言語化は「相手に伝わる言葉にする」ことが非常に重要です。

「相手に伝わる言葉」とはどういうものでしょうか?

それは、相手の前提知識や情報量、立場によっても異なるでしょうが、要は「相手目線に立った言葉」と言い換えられるでしょう。

言葉の意味そのものを細かく説明することは難しいですが、言葉を発するときに「この表現を使って相手は理解していただけるだろうか」と意識することが重要です。

介護や医療の現場では、どうしても専門用語が飛び交います。制度も複雑で、それをわかりやすく説明するのは至難の業かもしれません。

しかし私たちが考えるべきなのは、介護・医療従事者にとってその言葉が常識であっても、それがご利用者様やご家族様も同様とは限らない、ということです。

身近で分かりやすい言葉であっても、他社や他業界の人には別の言い方をしなければ上手く伝わらないこともよくあります。

言語化と聞くとつい「頭の中のイメージや考えをそのまま言葉にする」ことを意識してしまいがちですが、それだけでは足りません。

「相手に伝わるまでが一連の流れ」と捉えるのがよいでしょう。

「この言葉は、ご利用者様には難しいかも」「もっとこういう表現を使うと伝わるかもしれないな」という意識を持つだけで、ずいぶん変わってくるものです。

周りの人からフィードバックをもらう

自分が発した言葉の意図が相手にしっかり伝わったか、相手側に聞いてフィードバックを得ることも重要です。

相手に感想を求めると、ときにはご自身にとって厳しい指摘を受けることになるかもしれません。

セミナーに参加しますと、アンケートを求められることが多いかと思います。

これこそまさに「フィードバック」です。

もちろん、お褒めの言葉をいただきたいに決まっています。すごくうれしいですから。しかし主催者や演者は、参加者に感想を求めることによって、自己反省をするわけです。

人間誰しも、批判的なことを言われるのは嫌なものですが、自ら意見を求めることで客観的なフィードバックが得られ、次に活かすことができます。言語化力をもっと深めることができ、良好なコミュニケーションが図れるようになるでしょう。

複数の方々の前で話をしたり、現場でご利用者様等に説明をしたりするシーンがあったときに、もしその場に同僚や上司が近くにいたら、ぜひフィードバックを求めてみましょう。ご利用者様から直接お聞きしても結構です。

きっと、言語化力を高めるための貴重なご意見やご指摘をいただけるかもしれません。

今回は、介護医療現場において非常に重要な「言語化能力」の重要性や留意点について取り上げました。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。